UCHIMACHI BASE

主にバイクやその他の趣味について書いてます。

08:CD125Tレストア記。 ~エンジンを掛ける~

前回の記事。

akiyuki2119067018.hatenablog.com

 

 

前回まででエンジンのピストンリング交換、フレームの再塗装をしエンジンを載せるところまでやった。

f:id:keitarose067018:20201204230441j:plain

ここで一度エンジンの始動テストをして問題が無いようだったら他の部品を付けていく。

 

エンジンを始動するためには燃料噴射と点火が正しくできればよいのでとりあえずはこの2つを整えていく。

 

まずはキャブレター。これは純正。

f:id:keitarose067018:20200219021723j:plain

 キャブクリーナーで内部を洗浄し、レストア前にエンジンを掛けた際はアイドリングは正常に出来ていた。しかし、ダイヤフラムが硬化しているのかピストンの固着か、スロットルを開けても一向に回転数が上がらない。

ダイヤフラムはまだ新品部品が買えるようであったが(部品番号:16140-402-004)、当時1500円だったものが40年の間に値上がりして今や6000円近くした。

 

ダイヤフラムが思った以上に高く、これの交換で直るとも限らない。そして今後このキャブレターの部品が出る保証もないので代替品を探すことにした。

PD22という型番の後継の「PTG22」というのを購入。

f:id:keitarose067018:20201207232627j:plain

 お値段なんと5500円。安すぎる、少し不安…

 

取付けピッチは純正キャブと同じなので特に苦労なくそのまま取り付けできる。

f:id:keitarose067018:20201207234337j:plain

 スロージェット、メインジェットは純正より僅かに番手が小さい。今回は純正と入れ替えた。

 

ちなみにエアクリーナー側は純正キャブより径が細いため、純正エアクリーナーを使用する場合はゴムか何かで径を調整する必要がある。

 

説明書を読むと「エアスクリューアジャスターがありません」と書いてあった。どうやってアイドリング時の調整をすればよいのか分からない。それっぽいネジがあったのでドライバーで回していたら脆くてネジがつぶれてしまい 訳の分からない位置から回せなくなってしまったのだが、全く問題がないのでやはりエアスクリューは無いのかもしれない。

 

キャブが変わったことで純正スロットルワイヤーが使えなくなったので新しいものを用意した。

 ↓ハンドルを交換する予定なのでそれに合わせて若干短いものにした。

 

続いて、点火系。

f:id:keitarose067018:20190814203651j:plain

 メインハーネスにレギュレーター、イグニッションコイル、メインキーなどエンジンをかけるのに必要な部品をつけていく。ウインカーやそのリレー、スイッチはつけなくても大丈夫。

 

 

 案の定グジャグジャ...

f:id:keitarose067018:20210106192308j:plain

 

 点火に必要な部品を組み付けてキックしてみたが、プラグに火が飛んでいない。

これは困った…

 

 

火が飛ばない原因としては

①ポイント部の調整不良

②レギュレーターの故障

イグニッションコイルの故障

などが挙げられる。今までのバイクと違いポイント点火の調整という面倒な要素が加わっている。点火ができない原因が調整不良であるのか部品の故障か、そもそも点火ができないとそこが見極められないという状況であり、どこから手を付けてよいか分からない…

 

 

 ①ポイント部の調整不良

この車体はは現在主流のCDI方式より古い、ポイント点火という方式を採用している。

CDI方式では磁石とそれを読み取るセンサーで点火タイミングを把握しているが、ポイント点火ではコンタクトブレーカーと呼ばれる部品の接点が物理的に閉じたり開いたりして点火を行う。故にこのコンタクトブレーカーの接点がいつ開くか、そしてどのくらい開くかがきちんと調整されていなければ、正しく点火が行えない。

 

コンタクトブレーカーとコンデンサ、新品を購入した。

f:id:keitarose067018:20210210212341j:plain

このコンデンサはコンタクトブレーカーの接点が焼けないよう調節をしてくれているらしい。ここが弱ると接点にバチバチ火花が飛ぶようになる。純正部品を注文したところなんと1700円もした…

耐圧など条件を満たせば市販の電子工作用のコンデンサも普通に使えるらしい。容量は0.3μFくらい。

f:id:keitarose067018:20210212043323j:plain

 

 

ポイントギャップの調整。

まずクランクを反時計周りに回してポイント接点が最大に開く所で止める。そしてポイント接点の開き(ギャップ)が0.3mm~0.4mmになるように調整する。俗に名刺1枚分と言われている。

f:id:keitarose067018:20210212023118j:plain

 

次はタイミングの調整。

調整用の窓を覗くと「スパークアドバンサー」と呼ばれる部品にTとかFとか文字が彫ってあるのが見える。このTがエンジン本体の印と合わさった時はピストンが「上死点」にあることを示し、そこから少し離れたFは点火のタイミングを示す。この、Fマークがエンジン本体の印と合わさった瞬間に、コンタクトブレーカーの接点が開くよう調整を行う。

f:id:keitarose067018:20201001022922j:plain

 これが、目視で行うのは非常に難しい。

 

※通常は「タイミングライト」という専用工具で調整を行う。点火の瞬間にフラッシュのように点滅するライトを調整窓にかざすと、Fマークの位置が浮かび上がるという仕組み。

f:id:keitarose067018:20210212024709j:plain

タイミングライト~~(ダミ声)

 

調整前、めちゃくちゃタイミングがズレている。

f:id:keitarose067018:20210212024551j:plain


 調整後。アイドリングが安定したのと、若干燃調が変わった。

f:id:keitarose067018:20210212024546j:plain
※ちなみにエンジンがかからないとできないので、後日エンジンが始動してからタイミングライトによる調整を行いました。

 

 

 

この時、点火タイミングの調整が出来なければエンジンがかからないが、エンジンが掛からなければタイミングの調整も出来ないという「詰み」状態に…とりあえず目視で何度もタイミングを調整しながらその後の作業を行うことにした。(目視で調整してもエンジンはなんとかかかります。)

 

 

 

 ②レギュレーターの故障

タイミングの微調整はエンジンが始動してから本格的にやるとして、ひとまずレギュレーターが故障しているかもしれないという可能性を考える。

「回路をつないだ状態でキックしてもNランプが光らない」「ヘッドライト以外の灯火類が一切つかない」というような症状からレギュレーターの故障を疑った。

f:id:keitarose067018:20210212030130j:plain

純正部品は高い上に6Vでは何かと不便であるので、12V化も同時に行う。

 

CDに使われているレギュレーターは「全波整流レギュレーター」というタイプ。全波整流レギュレーターはさらにジェネレーターの発電方式によって「単相」と「3相」という2種類に分かれ、この車体(CD125Tz)は「単相全波整流レギュレーター」が純正で使用されている。レギュレーターから伸びているコードの内、赤はバッテリーのプラス、緑はアースで、2本の黄色線はジェネレーターへと繋がっている。この黄色線が2本なら「単相」、3本なら「3相」である。ちなみにスーパーカブなどに使われている半波整流レギュレーターはこの黄色線が1本。

 

まず買ったのは三相全波整流タイプのこれ。スクーター用の汎用品。

黄色線をつなぐところは3つあるがそのうちどれか2つを使用する。

f:id:keitarose067018:20210212033141j:plain

交換したところ、Nランプがキックで点灯するようになった。やはりレギュレーター故障していたようである。

しかし、結論から言うと、これは失敗。

f:id:keitarose067018:20210212033335j:plain

このレギュレーターでは電圧が全く下がらないのである。電圧計で測るとなんと50Vも出ている…聞いた話では三相レギュレーターには黄色線が3本ないと適切に動作しないものがあるらしい…

しばらく使っていたら焼けたサンマみたいな匂いがしてきた。どうやら中でなんかショートしたらしい。しばらくすると壊れてまったく反応が無くなってしまった。

 

気を取り直して次はこの単相全波整流タイプを購入。

f:id:keitarose067018:20210212033915j:plain

 購入当時は300円台だった…

f:id:keitarose067018:20210212034232j:plain

赤がバッテリーのプラス、緑がアース、ピンクと黄色がジェネレーターである。

精度や耐久性は不明だがとりあえず使えた。電圧が若干高いかなとは思うが…

 

 

イグニッションコイルの故障?

ポイント調整とレギュレーターの交換までやってなおも火が飛ばないのでいよいよイグニッションコイルの故障を疑った。

 

ポイント点火、二気筒用のイグニッションコイルを買ってきて取り付ければいいのだが一つ問題がある。それは「コイルの一次抵抗値」である。イグニッションコイル内には一次コイルと二次コイルというのがあり、これらの相互誘導作用によって12Vから数百Vという高電圧を作り出している。詳しいことはよく分からないがこの1次抵抗値が3Ω程度なければならないらしい。この一次抵抗値が低すぎると、電流が流れすぎてコンタクトブレーカーの接点にバチバチと火花が飛び、点火の効率が下がるばかりか接点が焼けて部品の寿命が短くなる。

 

ポイント点火用の二気筒用イグニッションコイル、一時抵抗値が3Ω付近という条件であれこれ探した結果、条件に近いものが見つかった。

f:id:keitarose067018:20210212035936j:plain

 これがレビューによると一時抵抗値が3Ω付近あるらしい。

 

めちゃくちゃ雑にセット。

f:id:keitarose067018:20210212040628j:plain

 プラグをつけてキックしてみると光った。

ようやく点火が上手くいった。レギュレーターの故障に加えてイグニッションコイルにも何らかの不調があったらしい。

 

 

ガソリンを入れるとエンジンも無事始動した。


CD125T エンジン音01

 

ヘッドを組んだのはこれが初めてであったが、異音もなく調子がよさそうである。

 

(後日談)

純正イグニッションコイル、生きていた。

Amazonで買ってきたよくわからないイグニッションコイルもしばらくは使えていたが、ある時回路を組み間違え、またもや焼けたサンマのような香ばしい匂いとともに壊れてしまった…そこでゴミ箱から純正イグニッションコイルを引っ張りだしてきて今度は接点不良を疑い、コードを切って新しくキャップを付けなおしてみた。

プラグを入れてキックすると火花が飛んだ。どうやらコード、キャップ間の接点不良だったらしい。ポイントとレギュレーターなど条件をコロコロ変えていたため、何が原因か把握しきれていなかったようだ。

f:id:keitarose067018:20210212045105j:plain

ちなみに純正レギュレーターは6V仕様であるため、12Vの電装系で使うにはコイルの一次抵抗値が足りない。ポイント接点からバチバチと火花が飛んでいる。

そこで、外部抵抗として適当な抵抗器をコード間に取り付け、一次抵抗値が3Ω近くになるように調整してみた。どうも効果があるらしく接点のスパークが多少収まった。

 

 ↓こういうやつ。

 

 

以上がエンジンがかかるまでの作業工程。

 ポイント点火は分からないことが多く、試行錯誤の連続で結局フレームにエンジンを載せてから始動まで5ヵ月くらいかかった。

 今回の車体で特に面倒くさかったのはバッテリーがなければエンジンが始動できないという点であった。本来ならこのCD125Tはバッテリーがなくてもエンジンがかかるようになっているはずなのだが、この車体はどこが悪いのかバッテリーの補助がないと正常に点火ができない。しかし、レギュレーター次第ではバッテリー無しでも点火できたり、かと思えばそのレギュレーターだと電圧が異常に高かったりと、何かと苦労が多かった。また故障診断の目安としていた灯火類が6V、新しくつけたレギュレーターが12Vであったため、よくバルブが飛んだ。12Vのを買えよ、とそういう話なのだが車体年式が古いためか電球もあまり見ない規格でなかなか手に入らなかったのである。

 年式が古いせいで情報もあまりなく、また今ではあまり見ない点火方式で分からないことも多くあり、仕組みを理解するのにも結構な時間が掛かった。いくつか買ったばかりの部品を壊したが、そのおかげでどういう汎用品で純正パーツの代用ができるのかある程度分かったので、まぁ良かったと思う。

 

 思えば1979年というのは当然インターネットなんてなかったのだから当時の人が何か書き残していることもないのである。インターネットに無いものはこの世にないと思い込みがちであったことに少し反省した。

 

 

~つづく~