06:一式陸攻を探す旅。 ~マルチビームソナーを用いた海底調査~
こんにちは。
夏の暑さも次第に和らぎ、段々と過ごしやすくなってきた今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。
前回は船とアクションカメラを用いて中海の海底の様子の撮影を試みました。
akiyuki2119067018.hatenablog.com
残念ながら目的の「険悪地」の正体が何なのか把握するには至りませんでしたが、海底の様子や水の透明度などが分かり、次につながる成果はあったかと思います。
この海底調査は5月上旬に行いました。
そして6月、中海に沈む一式陸攻のことが地元の新聞に取り上げられました。
この記事によって一式陸攻のことが地元の多くの人に知られることとなり、多くの反響がありました。一式陸攻の不時着を見たという方が新たに連絡をしてきてくださったり、その方を経由して海没処分前の二式大艇を見たという方からもお話を聞けたりなど、調査が進展するきっかけにもなりました。
そしてなんとこの新聞記事をきっかけとして地元の建設コンサルタント会社から電話があり、御厚意により最新鋭の「マルチビームソナー」という測定機器を用いて中海の海底を調査することになったのです。
なんと運が良いのでしょうか。こんなに上手い展開が来るとは思いもしませんでした。
と、いうことで今回はその調査の様子と結果を書いていこうと思います。
今回協力してくださったのは鳥取市に本社を置く「アサヒコンサルタント株式会社」様です。
↓ホームページ
通常は非常に高額な費用のかかる調査を今回は無償で引き受けてくださいました。本当に感謝してもしきれません。地域に根差した、とても良い企業です。
また調査に使う船は地元の方が快く協力してくださり、無事に用意することができました。本当に色々な方のご協力のもと、実現できたのだなぁと思います。
さて、今回の調査の目的は、有力候補である例の2つの険悪地の正体を解明することです。
それから海底の詳しい地形を把握すること、もし何かそれらしい物体が見つかれば水中ドローンを用いて撮影します。
7月20日、調査前日。
この日は調査で使うソナーを船に固定するための金具を取り付ける作業でした。
船名は「OSPRAY-Ⅴ」。
1隻目はⅠで段々とグレードアップしていき、これで4隻目だそうです。
これが金具。木材は隙間の調整に使うとのこと。
40分くらいで取り付けが終わりました。
これはパソコンと何やら高そうな機械。おそらくソナーで得た情報を処理するコンピュータなのでしょう。測定画面はパソコンを用いて見るそうです。
この日はこんな感じで機材の確認、調整や試験運転をやって終了。
そして翌21日。いよいよ調査当日。
若干悪天候でしたが、波がなかったので雨天決行。
昨日用意した土台にソナーを取り付け、パソコンなども船に設置します。
かなり本格的です。
早朝7時30分、出港。
測定画面はこんな感じ。
前回の記事でも書いた通り海底は凹凸のほとんどないまっさらな砂地のようです。
出港から約15分後・・・
写真左上の赤丸、航海用のブイの間にある険悪地の上を通過。
ここには高さ0.6mの海底障害物があるはずですが・・・測定画面に映るのは平坦な砂地のみ・・・
船上からでは険悪地は確認出来ませんでした。何故?
さらに15分後、例の一式陸攻の不時着現場とされる付近に到着。
目指すはこの険悪地。
GPSを見ながら雑巾がけをするように海上を往復し、周辺を満遍なく測定していきます。
が、しかし・・・一向に飛行機らしき物体は映らず。岸に近付いたり、離れたりして場所を変えましたが駄目でした。
そのうち天候が急変し波もかなり高くなってきたので予定より早く終了しました。
まだこの段階ではデータをきちんと見ていないのですが、「調査した範囲に飛行機の形をした物体は無かった」ということだけは確実に言えます。
おそらく今回測定した範囲の外にあるか、もしくは上から見てもわからないくらい砂に埋もれてしまっているのでしょう。1つの成果としては中海の正確な海底地形が把握できたことでしょうか。
終戦から今年で74年、その74年という歳月の長さと人の営みの儚さを見たような調査でした。
調査実施から約1ヵ月後の8月中旬、アサヒコンサルタントさんから調査結果のデータが届きました。
測定箇所が2箇所ありますが、ちょうど↓の写真の赤丸の周辺を測定しています。
左上の方の測定箇所です。全体の水深は10m程度。
右の方にある赤い点はブイです。
↓こんな感じ。
このブイ以外はずっとこんな感じで何も見当たりませんでした。
続いて右側の測定箇所。
海図と同じ地形をしているのがお分かりでしょうか。
そして例の険悪地ですが、多分これ。(画面の明るさを上げると見やすいです。)
この画像だと非常に分かりにくいですが、板状の物体が海底に出ています。
場所は↓の赤丸の部分。
海図記載の険悪地の場所と同じですね。
この板状の物体、大きさはというと...高さ約1m、長さ約1.7m、幅約0.4mです。
これは一体何でしょうか。これが飛行機の一部だというのはあまりピンときません。
もし仮にあり得るとすれば、垂直尾翼でしょうか。
他には目立って障害物らしき物もなく、なだらかですが戦後に大量の砂を採取しているため、山みたいになっているところが所々見られます。
深くなっている所の方が多いというのは予想外でした。
そんな訳で、今回はマルチビームソナーを用いた海底調査の様子とその結果を見ていきました。当初はもっとわかりやすく飛行機が落ちてるかなと思っていましたが、なかなかそう上手くはいかないものです。
今後は
・今回調査した範囲外にある。
・範囲内だが完全に砂に埋もれている。
という2つの可能性について探っていこうと思います。
~つづく~
05:一式陸攻を探す旅。~険悪地の正体に迫る~
こんにちは。
日に日に気温も上がり、もはや暑いまである今日この頃ですね。
前回の記事。
akiyuki2119067018.hatenablog.com
昨年の8月末から本日(2019年5月)に至るまで、この中海に沈む一式陸攻についての進展は特にありませんでしたが、並行して調査していた「二式大艇」や隠岐の島の水上機などについて、新たな発見がいくつもありました。
今までは分からなかった機体の処分場所についての証言が得られ、近いうちに周辺を調査をする予定です。
akiyuki2119067018.hatenablog.com
先日隠岐の島へ行き、話を聞いてきたので、また後日記事を更新します。
akiyuki2119067018.hatenablog.com
この他にもいくつか調べていることがあります。また、ある程度形になったら紹介しようと思っています。
さて、今回の内容に移ります。
なんとこの度、陸攻捜索のために船を借りることができました。
いくら暖かくなったとはいえまだ5月です。
沖合300mまで泳いでいくにはまだ水の冷たい季節だったのでこれは大変助かりました。
今回は以前紹介した湖底の険悪地の正体はいったい何なのか、その正体に迫っていこうと思います。
その前に。
前回も言いましたが、まず第一に例の険悪地がある海底12mの様子をどうやって観察するか、という大きな問題を解決しなければいけませんね。
水深12m、素潜りで行くにはちょっと深いです。
スキューバの道具やサイドスキャンソナーを借りようにもまだ、そこまでの資金が出せません。現段階では多くの人を巻き込んで資金を調達するというようなことは不可能です・・・
できるだけ安く、楽に湖底を観察する手段が求められます。
そこで思いついたのがこれ、アクションカムです。
【国内正規品】GoPro HERO7 Black CHDHX-701-FW ゴープロ ヒーロー7 ブラック ウェアラブル アクション カメラ 【GoPro公式】
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これに防水措置を施し、船上から紐で吊り下げて、水中を観察します。
↓お金がないならこういう安いのが良いです。品質と性能ともに本家とそこまで大差ないです(個人の感想です。)
このように重りとホームセンターで買った金具を使って、
こう。
命名、浅瀬調査艇「ちゅうかい3000(cm)」
かの有名な有人潜水調査艇「しんかい」を真似てこの名前にしました。
カメラの防水性能は約30mです。
これに紐をつけて船上から垂らします。
また、せっかくなので映像をリアルタイムで見たいです。
このアクションカムにはwifi機能がついており、スマホやタブレットで映像をリアルタイムで見ることができるのですが・・・
それが水中では全く通用しないのです。
理由はただ一つ、水中ではwifiの電波が遮断されてしまうから。
そこで水中でもwifi接続を維持する方法はないか調べました。
するとこのような商品が...
このケーブルの中にwifiの電波を這わせる(?)ことにより、水中でも接続を維持することができるようです。とても画期的な商品ですね。数件のレビューを見ましたが、どれも問題なく水中、水上間でのwifi接続の維持に成功していました。
しかし・・・長さが10mしかない!足りない!
とても残念なことに10m以上の長さのものは売っていませんでした・・・
こうなっては仕方がありません。
「自作」という第三の可能性に活路を見出すことに・・・
さっそく「gopro wifi 水中」と検索すると意外にあっさりとこのケーブルを自作する方法が出てきました。しかも結構簡単、そして買うよりずっと安い。
私でも出来そうな感じだったので実際に作ってみることにしました。
主に必要な材料はこれ。
マスプロ電工 家庭用75Ω4Cケーブル 灰色 20m S4CFB20M(H)-P
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テレビ関係の配線で使うケーブルっぽいです。大体1mで140円くらい。
上のリンク記事に詳しい解説が載っているので詳細は省きますが、このケーブルの先端を加工することで実際に売っているwifi延長ケーブルと同等の働きをするものを作ることができます。
①切って中身のコードを出す。
②出した決まった長さにコードを加工。
電波の速度(300000km/s)とwifiの周波数(2.4GHz)からなんやかんや計算して出した長さ、31.25mmにそれぞれのコードを加工します。
③水が入らないように適当に処置。
ちなみにコードが直接水に触れるようにしておくと失敗しました。
準備が整ったので早速運用試験。
結構はっきり映っていますね。これならいけるかもしれません。
タブレットを使ってリアルタイムで中継してみましたが、2秒程度の遅延があるものの10m以上の水深があっても問題なく見ることができました。
あとはこれが、現地でどのくらい通用するか・・・
と、いうことで迎えた調査当日。
2019年5月1日、令和になって初めての日です。
GPSと険悪地の座標を元に、船で例の険悪地を目指します。
が、これがなかなか難しい。
GPSに多少の誤差があることに加えて船が流され、同じ位置で留まっておくことが非常に困難でした。錨を下ろしても湖底がヘドロであるため、きちんと固定ができません。これは予想外でした。
作戦を変更し、船で険悪地周辺を行ったり来たりしながら湖底を撮影することに。
↑カメラ本体の設定ができていなかったので日付はめちゃくちゃです。
これは少し外れた地点の様子です。水深は8m程度、湖底は砂地で何の凹凸もなく、まったく生き物が住んでいません。
湖底はゴミだらけでは?と思っていましたが、想像以上に綺麗です。
こっちは水深10m以上の地点。こちらは例の険悪地に近い位置です。
この日は曇りで湖底まで光が届かないのか非常に暗く、何も見えませんでした。
さらに底に積もったヘドロが、視界を邪魔しています。
この視界の悪さではちょっと捜索するのは難しいですね・・・
結局、こんな感じで3時間くらい湖底を撮影し続けたのですが例の険悪地の正体を捉えるには至りませんでした・・・
非常に残念です。座標が分かっていて、船があったとしてもここまで難しいとは思っていませんでした。
これは逆に泳いで行ったほうが良いかもしれません・・・
今回はここまで。
船まで使って行った初の調査でしたが、残念ながら険悪地の正体を見ることはできませんでした。でも、まだこれで諦めるというわけではありません。
今年の夏に、再び挑戦したいと思います。
~続く~
04:一式陸攻を探す旅。~湖底の険悪地~
こんにちは。
8月も終盤に差し掛かり、海水浴シーズンも終わってしまいましたね。
今回は2度目の探索です。
akiyuki2119067018.hatenablog.com
前回は一体どの方角に泳いでいるのか、岸から何mの場所にいるのかなどが全く把握できませんでした。
その対抗策として今回は.....スマホを持って泳ぎます。
家電量販店にスマホの防水ケースが売っていました。
水中には入れるなと書いてありましたが、それなりの防水規格に合格しているものらしいです。もともとスマホのほうも30cm程度の防水性能があるので多分大丈夫。
結果からいうと、まったく問題ありませんでした。
緯度、経度を表示してくれるGPSアプリを使って狙ったポイントに行こうと思います。
場所は前回の記事でも紹介したこの浅瀬。
(海上保安庁刊行 W1174)
今回の目的はこの浅瀬の底がどうなっているのかということと、湖底の掘削範囲外である旧海岸線から1km地点まで泳いでたどりつけるかという検証です。
台風が去った翌々日の日曜日。運よくこの日は波がなく泳ぎやすそう。
少なくとも前回よりは水がきれいです。
装備を固め、いざ入水。
こういう海水浴場でない場所を長時間泳ぐときは絶対に2人以上で、なるべくウエットスーツ生地の長袖、長ズボンで泳ぎましょう。小さい頃なんかはライフジャケット着て泳いでました。
GPSアプリと魚探を頼りに海図から測った座標を目指して泳ぎます。
相変わらず水は汚いです。透明度は2mくらい。自分の足の先がようやく見えるくらいです。
ミズクラゲがいっぱいいます。
ミズクラゲに刺されたという話はめったに聞きませんが、一応毒があるようです。
こういう時も長袖、長ズボンだと安心です。
コンパスで方位を見ながら、ひたすら南西に向かって泳ぎます。
岸から150mくらいの位置から急に水深が深くなりました。掘削範囲に入ったのです。
(海上保安庁刊行 W1174)
そのまま泳ぐこと約20分。水深は再び6mへ。どうやら例の浅瀬に乗ったようです。
潜ってみると湖底はただの砂。湖底付近は海水が流れていて、所々茶色がかっています。生き物も少なく、まっさらな砂地です。
泳いでる様子。
水が濁っているため、海面付近からでは底が全く見えません。これでは探しようがないですね・・・
その後、旧海岸線から1kmの地点を目指しましたが、潮に流されて目的の位置まで到達できず。気温が上がり波も出てきたのでそこで引き返しました。
帰宅後、あの現象の起きた場所の座標をメモしておいたので海図に照らし合わせてみました。
(海上保安庁刊行 W1174)
+の印をつけた場所がその位置です。スマホが安物なのでGPSの座標に多少ズレがあるかとは思いますが大体この辺り。旧海岸線からは750m、証言の通り不時着を目撃した漁師さんの家のほぼ真正面の水深10mの地点です。
湖底の様子を確認しようにも10mも水深があるとなれば素潜りでは厳しそうです。
それはそうと、以前から海図を見るたびに気になっていましたがこの#の記号は何なのでしょう。
(海上保安庁刊行 W1174)
少し調べてみるとこの記号は険悪地というものを示す記号だと分かりました。。隣の()内の数字はその水深です。
険悪地とは何かというと・・・
海底に存在する、コンクリート塊、沈木、銅材、その他錨泊、底引きなどの漁業に障害となる、異質物が存在する地点又は区域。
ということらしいです。
これは怪しい・・・。
(海上保安庁刊行 W1174)
この「#」の場所は先ほど印をつけた場所と近く、当時不時着を目撃した漁師さんの自宅のほぼ正面で、旧海岸線から約750mの地点。水深6mの2つの浅瀬に挟まれており、この物体がある場所の水深は12.4m。
矢印が使用したと思われる滑走路、赤い星印が目撃場所、ピンが険悪地です。
どうでしょうか。何も関係のないただのゴミという可能性も捨てきれませんが、それにしても場所が良すぎます。
しかし、水深が12.4mもあるというのが少し気になりますね。
ここの水深は元々6m程度なので12.4mのこの場所はほぼ確実に掘削されて水深が深くなった地点です。(掘削地点には無いというのが当初の予想でした。)
「砂を掘ったのが原因で山のようになって残った浅瀬が崩れて下に落ちた。」とすればなんとなく説明がつきますが・・・
一体これは何なのでしょうか??一式陸攻なのか、それとも冷蔵庫などの粗大ゴミか...
そこで、この険悪地の記号について、海図を作成した海上保安庁に聞いてみました。
すると、いくつかの情報とともに水深測定の記録用紙の写真を送ってくれました。
(諸事情あって、ここの画像は私が書いた模写です。)
この茶柱みたいな棒が例の物体を指します。これではよく分かりませんね・・・
近年海底調査で大活躍しているサイドスキャンソナーのような機材はこの海域の測定には使用しておらず、海保でもこれ以上の情報は持っていないということです。
サイドスキャンソナー(海底面状況探査) | 地形・地質調査 | 沿岸海洋調査株式会社
この物体は高さが80cm程度であるそうです。
飛行機にしては小さすぎますが、この辺りはかなりの深さまでずっと砂地で、さらに砂の掘削のためにかなりの量の砂が動いています。それを考慮すれば物体の大部分が砂に埋もれていたとしても不思議ではありません。
実際、平成4年に鹿児島県西部の吹上浜で引き揚げられた零式水上偵察機は発見当初、このように砂に埋もれてしまっていたそうです。
これなら高さ80㎝といってもありえなくもないような...
とはいってもまぁ、たったこれだけの情報では確定するには至りません。
こればっかりは実際に現地に行って、湖底を見てみるまではこれが一式陸攻なのか、それともただの粗大ゴミなのか判断することができません。
しかし、水深12mまでどうやって行くか、湖底をどうやって見るか、それが非常に難しいのです・・・・・
~続く~
03:一式陸攻を探す旅。~探索編その1~
前回の続きです。
akiyuki2119067018.hatenablog.com
あれから日を改めて実際に泳いでみました。
それで1つ、分かったことがあります。
水深が異様に深い.....
なんと、先日載せていた地図では6mほどしかないはずの場所の水深が10m以上あるのです。ここは戦後に埋め立て工事の材料調達のため、湖底の砂を取ったという話は聞いていましたが、予想以上に範囲が広く、そして深い。
これは一体どうなっているのか。
海上保安庁発行の海図を買いました。
(海上保安庁刊行 W1174)
なんと、不時着した現場周辺はこんなに掘られていました。かつて6mだった場所が12m......なんと、2倍ほど深くなっています。
ここまでとは思ってもみませんでした。
掘られている範囲は旧海岸線から1000mあるかないかという所まで。証言の不時着位置と合わせると結構微妙な感じですが、もし仮にこの中に一式陸攻があった場合は探すのが困難です。
海図をよく見ると.....
(海上保安庁刊行 W1174)
赤丸で囲った部分ですが、所々浅瀬が不自然に残っている部分もありますね。
しかも、例の漁師さんの家の前で、旧海岸線からは600m~700m。
一体どういう理由でこのように浅い部分が残っているのでしょう?単なる気まぐれ?
それとも、何か湖底にあったものを避けたのでしょうか?まぁこれは都合のいい想像ですが。
さらに、太平洋戦争当時の美保基地の航空写真を入手しました。
戦時中、米軍が撮影したものだそうです。
ちょっと画像が汚いですが、滑走路が4本あるのが見えるでしょうか。現在とはどの滑走路も向きが異なります。
現在の滑走路って戦後に新設されたものだったのですね。
不時着した当時は安来市方面から風が吹いていたそうなのでおそらく、画像中の右肩上がりに伸びる一際細い滑走路、この第4滑走路を使用して離陸を試みたのではないかと思います。
そして、この4本の滑走路と現在の海図を照らし合わせると、このようになります。
(海上保安庁刊行 W1174)
手書きなので正確性にはやや欠けますが、第4滑走路から引いた直線は例の浅瀬と非常に近い距離を通ります。前述の「掘削作業時に障害物があったからここを避けた」というのもあながち間違っていないのでは.....
「よしここだ!!ここに行ってみよう!!」と梅雨が開けるのを待って再び海へ。
この日は波がない。
元々海水浴が趣味なので装備は一通り揃っています。
そして今回初登場の頼もしい新装備達。
ポータブル魚群探知機と防水カメラです。
魚群探知機は魚だけでなく水深と大まかな地形を測ってくれます。
これがあれば大丈夫だろう。
そう思っていざ入水。
が、
水がめっちゃ汚ない.........
なんと、50cm先すら見えません!!
腐ったお茶のような汚い緑色に濁っています。市のホームページによるとこの周辺の透明度は2.5mですからこの日は普段よりずっと汚いです。
先週の西日本豪雨の影響でしょうか。こちら側でも結構降ったので一気に河川の濁った水が流入したのでしょう。
中海は外洋に繋がる水路が狭いので水の循環が遅いのです。これはもうしばらく待たないと行けませんね.....
それと、まっすぐ泳ぐのが難しかったです。この辺りは微妙に流れがあり、知らぬ間に少しずつ流されてしまいます。GPSか何かがあった方が良さそうです。
水が綺麗になるまで少し時間をおいてみようと思います。
う~ん。どれだけ綺麗になるかなぁ.....
~続く~
02:一式陸攻を探す旅。~現地視察編~
先日、中海の底に人知れず眠っているかもしれないという一式陸攻の話をご紹介しましたが、あれから大きな進展がありました。
↓前回の記事。
akiyuki2119067018.hatenablog.com
なんと、、、当時、不時着を目撃し、実際に救助に行った漁師の息子さん(当時小学校6年生)がまだご存命で、当時のお話を聞くことができたのです!!
その方曰く、
「初めはあまりにも高度が低いので水上飛行機かと思っていた。その後、主翼が水面を叩き始めそのまま主翼を軸にくるっと水面で回転し、ちょうど自分の家の前の沖合い500mくらいの場所に着水した。しばらくすると機体上部の方から人が出てきて、手を振っている様子だったので父と共に船で救助に行った。」とのこと。
衝撃的な出来事だったのであれから73年たった今でもよく覚えているそうです。
検証してみましょう。
これが不時着現場周辺の現在の地図です。
(国土地理院より引用)
地図の上のほうに飛行場があります。出っ張っているのは戦後に滑走路延長のため、埋め立てられた部分です。
その漁師さんの家は「米子市」という文字のちょうど「米」の辺り。昔はここが海岸線でしたが、ここも戦後、工場誘致のため200mほど埋め立てられています。(工場誘致は結局失敗に終わり今はソフトバンクのメガソーラー発電所になっています。)
しかし、その漁師さんの家の正面(地図でいうと海岸線に垂直)はずいぶんと現在の滑走路から外れた位置にあります。
一体これはどういうことなのでしょうか。
この謎を解く鍵は手記の中にありました。
手記には
「21:30。最初に離陸線に着いた。風は左前方、安来市方面から吹いていたので中海に向かって滑走路を始めた。」という記述があります。
(Google mapより引用)
写真を見てください。飛行場から見て安来市は確かに左前方、方角ではほぼ真南にあります。
そして、この方向から風が吹いていたということなので、この時おそらく現在の滑走路に対してやや左斜め向きの方向に離陸を試みたのでしょう。当時の滑走路は現在のものとは全くの別物で、本数も4本あったそうです。
そしてその方向(安来に向かって)に飛び、すぐに着水した場合、ちょうど救助に行った漁師さんの家の真正面辺りになります。
辻褄が合いますね。
そしてまた先ほどの国土地理院の地図です。
(国土地理院より引用)
全高が5mほどある一式陸攻が水面に隠れるには少なくとも6m以上は水深が必要だと思います。漁師さんの証言では不時着位置は旧海岸線から500m、手記では1000mと記載されており証言にズレがありますが、不時着したのは深夜あるいは早朝の暗い時間帯だったようなので正確に目視で距離を測るのが難しかったのでしょう。
手記の記述と漁師さんの証言、地図上の水深データから、不時着した地点は旧海岸線から大体600m~1200m、水深6~7.5mほど(当時)の湖底だったのではないかと予測が立ちます。
さっそく行ってみようという話になり、現場へ。
道を間違え、道なき道を行くことに.....でもジムニーだから大丈夫。抜群の走破性で現場に到着。
ここがその現場です。ここから正面に400mほど行った所が先ほど予測した地点です。
この日は風があまりにも強くとても泳げる状態でなかったため捜索は断念。
遠すぎて見えませんがこの先に美保基地があります。
今回はここまでです。
ここで一つ気がかりなのが、もう既に過去に見つけられてしまって処分され、現存していないのではないかという点ですよね。
この辺りは戦後にだいぶ整備され大きく水深が変わってしまっています。また、干拓事業の際に海底調査が何度も行われているようです。水深の浅い穏やかな海ですからあれほどの鉄の塊など見つからない方が不思議なくらいです。
しかし、過去に発見されたということはないと私は思っています。
当時、この不時着を知る人はごく僅かに限られました。離陸を見守った管制官ですら戦後十数年経ってから不時着したことを知ったくらいですから本当に誰も知らなかったのです。手記も発行部数は400冊ほどでそのほとんどが戦友やその遺族の方々のもとへ配られました。
よって戦後、行政や自衛隊が不時着を把握し、「あの時不時着したから調査して引き揚げよう」という話になることはおそらくなかったと思います。
残る可能性として挙げられるのは干拓事業の際に偶然見つかったというものですが、この可能性も薄いと思っています。
私の曾祖父は県の土木課に勤務しており、干拓事業の際はその責任者の一人でした。
しかし、中海から飛行機が揚がったという話は家族の誰も聞いたことがありません。
もっと言うと、当時救助に行ったあの漁師さんさえもそんな話は聞いたことがないとおっしゃっていました。
一式陸攻はサイズがかなり大きいですし重さも15tほどあります、そしておそらくこの機体は250kg爆弾を4発ほど積んだままです。
250kg爆弾一発で巡洋艦が撃沈できると手記に書いてありましたからこれはめちゃくちゃ危ないです。そんなものが海底調査の際に水深10m足らずの湖で見つかったら当然大騒ぎになります。新聞にだって載ったでしょうし、海もしばらくは立ち入り禁止になったでしょう。市史に残る大事件です。
ゴミだと思って書類報告も無しに捨ててしまったというのも考えにくいです。
以上から、現在も湖底に沈んでいる可能性は高いと思います。
本当は今にでも警察や自衛隊に届け出たい所です。しかし現段階ではまともに対応してもらえないでしょう。
そりゃそうです。戦後73年にもなって、「湖に爆撃機が沈んでるぞ!!!」なんて証拠も無しに言ってる一般人がいたら寒いイタズラか何かだと普通は思います。
向こうも仕事で忙しいですからそんな訳の分からないものを相手にしている暇はありません。
それに地元の共通認識として中海と戦争はあまり結び付くことがないのでなおさら嘘臭い話に聞こえてしまいます。
とにかく証拠を示さなければ何も始まりません。
泳ぐかぁ.........水、臭そうだけど.......
~続く~
01:湖の底に一式陸攻...?
先日タウンメイト80を譲っていただいた近所の中華料理店から、今度は太平洋戦争時に一式陸攻乗りだった先代の店主の手記を貸してもらいました。
タウンメイトについてはこちら。
akiyuki2119067018.hatenablog.com
500ページに及ぶ大作、書き上げるのに10年もかかったのだとか。米軍や防衛省に連絡をとって検証を行い、巻末には戦果や当時の状況など様々なデータが詳細にまとめられています。
文章がとても上手なので戦争に詳しくない方にも読みやすいと思います。
これだけ貴重な内容の本にも関わらず、世にほとんど出回っていません。400冊ほど発行されたこの本の殆どは戦友とその遺族の方々の手に渡りました。
好評だったため、後に大手出版社から再販の話もあったそうですが断ってしまったそうです。ですので現在、一般人が読めるのは市立図書館と国立国会図書館にある2冊くらいしかありません。
早速読み進めていると...
目次のなかにとても気になる項目がありました。
1945年8月、終戦の3日ほど前になって突如進軍してきたソ連軍艦を迎え撃つため出撃した際、離陸に失敗して夜の中海に不時着したという話です。
神業のような着水で幸いにも負傷者はなく、全員無事だったそうですが当時、管制塔が無事離陸したと(終戦後まで)勘違いしており救助が来なかったとのこと。
「仕方ない泳いで帰るか」というところへ近くに住む漁師の親子が手漕ぎ船で助けに来てくれた。その後、救助に来なかったことに腹が立ち、結局軍に事故報告を出さなかった。というようなことが書いてあります。
手記によるとこの時、飛行機は美保基地から中海に向けて離陸しました。美保基地は現在では自衛隊の基地と、空港になっています。空港のほうは「米子鬼太郎空港」という変わった名前です(私は気に入ってますが)。
(Google mapより引用)
水深は最も深い場所でも17mと比較的浅く、大部分が水深10m以下です。
昔は海水浴や漁業もある程度されていたようですが、水質汚染によってその数は激減。
今では海水浴などもってのほか、漁業もほとんど行われておらず....つまりめったに誰も入らない湖なのです。
この辺りで一式陸攻が見つかった、引き揚げられたという話はおろか、落ちたことすら知っている人はいません。
もっと言えば、昔この辺りに旧日本軍の基地があったことでさえ知っている人はそう多くはないのです。
今回のことから、一つの仮説が立ちます。
それは...一式陸攻の完全な状態の機体が水深8mほどの湖の底に今も沈んでいる。ということ。
現在、国内にある一式陸攻の現存機体は山梨県の河口湖自動車博物館に復元機が1機あるくらいでもうほとんど残っていないようです。
これは貴重な戦争資料でもありますし、ましてや実際会ったことのある人の乗っていた機体です。できたら探してみたいと思います。
中海も最近、長年の努力によって泳げるほどには綺麗になりました(それでも泳いでいる人はいませんが)。これからもう少し情報を集めていこうと思います。
~続く~